僭越ながら、赤血球研究会の初代会長を拝命いたしました、熊本大学の三原田賢一です。
赤血球は、子供でも「赤血球ってどんな形かな?」と聞けば多くの場合赤い丸(真ん中にくぼみをつけてくれたら完璧)を描いてくれるような、我々にとってとても身近な細胞です。全身を駆け巡り、酸素を運搬するという生命の維持にとって不可欠な存在であり、また全身の細胞のうち80%を占めるほど人体の大きな構成成分になっています。
そんな赤血球ですが、長い血液学の歴史を経てなお、未解明な謎で溢れています。全身を巡るための柔軟かつ強固な細胞膜、効率よく酸素を運搬するための鉄代謝、なぜか哺乳類だけで起こる核の排出(脱核)、幹細胞からの分化等々、赤血球の持つ様々な特徴について解き明かすために、様々な分野の専門家が赤血球研究に挑んでいます。さらに、医療の現場では輸血治療の安全かつ安定的な実施のため、献血事業に携わる方々の事業展開・研究開発が面々と行われています。また、難治性の貧血治療のために、日夜新しい治療薬の開発が進められています。
しかし、残念ながら現在日本での赤血球研究は「活発である」とは言いがたい状況です。そこで、なんとか赤血球研究をもっと盛り上げよう、と有志が集まり、様々な立場で赤血球に関わる方々が一堂に会し、交流を深め新たなネットワークを構築する場を作れるように『赤血球研究シンポジウム』を始めました。多くの方のご理解とご協力をいただき、シンポジウムを行って参りましたが、より安定した運営とさらに多くの方とつながるため、かつて存在した「赤血球研究会」をこのような形でリバイバルし、再発足させることとなりました。
まだまだ小さな研究会ですが、日本の、そして世界の赤血球研究と輸血医療に少しでも貢献できれば幸いです。
赤血球研究会会長
三原田賢一(熊本大学国際先端医学研究機構 特別招聘教授)